タクシー歩合の仕組みと計算方法|額面と手取りの差を整理
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タクシー転職を考えるとき、多くの人が最初につまずくのが「歩合の仕組みが分かりにくい」という点です。
「歩合率55%」と言われても、実際に手取りでいくらになるのかはイメージしにくいものです。
とくに40代未経験での転職では、生活設計に直結するため、給与の仕組みを正確に理解しておきたいところです。
結論から言うと、タクシーの給与は「売上 × 歩合率」が基本ですが、実際の手取りはこの計算だけでは決まりません。足切り(ノルマ)・給与体系・賞与積立・社会保険料などが絡むためです。この記事では、歩合の基本から計算方法、足切りの誤解されやすい仕組み、そして「歩合率55%でも手取りが思ったより少ない理由」までを、計算例とともに整理します。
この記事で分かること
- タクシーの歩合の基本的な仕組みと歩合率の相場
- 給与体系3タイプ(A型・B型・AB型)の違い
- 歩合給の計算方法(計算例つき)
- 足切りの誤解されやすい仕組みと、違法ではない理由
- 歩合率55%でも手取りが思ったより少ない理由
タクシーの歩合とは?基本の仕組み

タクシーの給与は「歩合制」が基本です。歩合制とは、売上(営業収入)の一定割合がドライバーの給与になる仕組みのことです。この「売上に対して何割が給与になるか」を示す割合を歩合率といいます。
たとえば歩合率が55%なら、月の売上が50万円のとき、歩合給は「50万円 × 55% = 27.5万円」が基本の計算になります。会社員のような毎月固定の給与ではなく、売上に応じて変動するのがタクシーの給与の大きな特徴です。
歩合率の相場はどのくらいか
歩合率は会社によって異なりますが、一般的には50〜60%前後で設定されていることが多いとされています。大手と中小では差があり、中小のほうが歩合率が高い傾向が見られることもあります。
ただし、ここで注意したいのは「歩合率が高い会社=手取りが多い会社」とは限らないという点です。歩合率の数字だけでなく、後述する足切りライン・固定給の有無・賞与積立の割合まで含めて見ないと、実際の手取りは判断できません。歩合率を会社ごとに比較したい方は東京タクシー会社比較ガイドも参考になります。
給与体系3タイプ(A型・B型・AB型)の違い
タクシーの歩合制は大きく3タイプに分かれます。同じ歩合制でも安定性と稼ぎ方が変わるため、自分に合うタイプの理解が重要です。
※スマホでは表を横にスライドしてご覧いただけます。
| 給与体系 |
構成 |
特徴 |
向いている人 |
| A型 |
固定給+歩合給+賞与 |
固定給が多めで月収が安定。実績による上乗せは少なめ |
安定重視・未経験者 |
| B型 |
完全歩合給 |
売上がそのまま給与に反映。変動が最も大きい |
経験者・実績に自信がある人 |
| AB型 |
固定給+歩合給+賞与積立 |
A型とB型の中間。現在もっとも多く採用されている |
安定と成果の両立を求める人 |
現在のタクシー会社でもっとも多く採用されているのはAB型です。固定給による安定と、頑張った分が給与に反映される歩合給のメリットを兼ね備えているためです。未経験で安定を求めるならA型かAB型、実績に自信があり大きく稼ぎたいならB型、というのが一つの目安になります。
歩合の計算方法【計算例つき】

ここからは、実際の計算方法を例とともに見ていきます。給与体系によって計算式が変わります。
B型(完全歩合)の計算例
B型は最もシンプルで、計算式は「月間売上 × 歩合率」です。
計算例(B型・歩合率60%の場合)
月間売上が50万円のとき
50万円 × 60% = 30万円(基本の月給)
※ここに深夜・残業の割増、各種手当が加わる場合があります
一部歩合(固定給+歩合)の計算例
固定給がある場合の計算式は「(売上 × 歩合率)+ 固定給」です。
計算例(固定給15万円+歩合の場合)
固定給15万円・歩合給5万円なら
15万円 + 5万円 = 20万円(基本の収入)
※これに時間外・深夜割増、各種手当が加わる場合があります
AB型の計算例(賞与積立つき)
AB型は、固定給と歩合給を合算した給与のうち、一定割合を年2〜3回の賞与として積み立てる仕組みです。毎月の給与からは積立分が差し引かれます。
計算例(AB型・歩率63%・積立13%の場合)
月の営業売上が60万円のとき
毎月の給与:60万円 ×(63% − 13%)= 30万円
賞与積立:60万円 × 13% = 7.8万円(年2〜3回の賞与として後で支給)
このように、AB型では月々の給与だけを見ると低く感じられますが、積立分が賞与としてあとから戻ってきます。月収だけで判断せず、賞与を含めた年収で見ることが大切です。年収全体の見方はタクシー運転手の年収はどれくらい?で整理しています。
足切り(ノルマ)の仕組み|誤解されやすい点

歩合制を理解するうえで欠かせないのが「足切り」です。ここは多くの人が誤解しやすい部分なので、正確に押さえておきましょう。足切りの呼び方や運用は会社によって異なりますが、大きく分けると次の2つのタイプがあります。まず全体像を図で整理します。
足切りの2つのタイプ(いずれも数値は一例)
足切りの2つのタイプ(数値は一例)
①は足切り額までを固定給(最低保証)でカバーし、超えた分に歩合をつけるタイプ。②は足切りを超えられないと歩合率そのものが下がるタイプです。どちらの運用かは会社によって異なるため、応募前に確認しておくと安心です。以下、もっとも基本となる①の仕組みから見ていきます。
足切りは「超えた分のみ」歩合がかかる
足切り(ノルマ)とは、一定の売上ラインを設け、そのラインを超えた分のみに歩合率がかかる仕組みのことです。「売上全体に歩合がかかる」と誤解している人が多いですが、実際は違うケースが多くあります。
足切りの計算例(足切り40万円・歩合制の場合)
月間売上が60万円・足切りライン40万円のとき
歩合がかかるのは「60万円 − 40万円 = 20万円」の部分のみ
40万円分には歩合率がかからず、その代わりに固定給が支給される、という仕組みの会社が多くあります
つまり、足切り額の部分は「固定給(最低保証)」として支給され、それを超えた分に歩合がつく構造です。固定給があるのは、この足切りの仕組みがあるためでもあります。
足切り未達でも解雇されない・最低賃金は保証される
「足切り=ノルマ未達でクビ」というイメージを持つ人もいますが、これは誤解です。達成できなくても、それ自体を理由に解雇されることはありません。ただし未達の乗務が続くと、歩合給が下がる・賞与計算に影響するといった経済的なデメリットはあります。
重要な前提
タクシーの給与が歩合制であっても、賃金を1時間当たりに換算した額は、都道府県ごとの最低賃金を下回ることはできません(最低賃金法による)。完全歩合制であっても、売上ゼロで給与ゼロになることはなく、最低賃金は法律で保証されています。
足切りそのものは違法ではありません。「足切り 違法」と検索する方もいますが、足切りの仕組み自体は適法であり、最低賃金保証とセットで運用されています。ただし、足切りライン以下を完全歩合だけで計算し、最低賃金を割り込むような運用は最低賃金法違反になり得ます。保証給の詳しい仕組みはタクシーの保証給はどう見る?で整理しています。
足切りが不安なら会社選びで回避できる
足切りラインが高い会社は、立ち上がり期の未経験者には超えにくく、結果的に歩合が伸びにくいことがあります。一方、足切りが緩い会社や保証給が手厚い会社を選べば、最初の数か月の不安を減らせます。条件は会社ごとに大きく異なるため、応募前の確認が大切です。
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足切りラインや保証給の条件は会社によって大きく異なります。「足切りが不安」という方は、足切りが緩い会社や保証給が手厚い会社を比較して選ぶことで、立ち上がり期の不安を減らせます。未経験向けに条件を比較したい方は、こちらが参考になります。
→ タクシードライバーに特化した転職サービス【ドライバーズワーク】
歩合率55%でも手取りが思ったより少ない理由
ここが多くの人が見落とすポイントです。「歩合率55%なら、売上の半分以上もらえる」と思いがちですが、実際に毎月口座へ入る手取りはもっと少なくなります。理由を順番に見ていきましょう。
額面と手取りの差(歩合率55%・月間売上50万円・AB型の一例)
① 歩合の総額(額面のもと):50万円 × 55% = 27.5万円
② このうち賞与積立分(仮に売上の10%=5万円)は毎月の給与から差し引かれ、年2〜3回の賞与としてあとから支給
→ 毎月の給与(額面):27.5万円 − 5万円 = 約22.5万円
③ ここから社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)と所得税・住民税が差し引かれる
④ 社会保険料と税で額面のおおむね2割前後が引かれ、手取りは額面の約8割が目安
「歩合率が高いのに手取りが思ったより少ない」と感じる人の多くは、額面の歩合給だけを見て、賞与積立や税・社会保険料を計算に入れていないケースです。毎月の手取りは「額面の約8割」を目安にイメージしておくと、入社後のギャップを減らせます。賞与積立分は後でまとまって戻ってくる点も押さえておきましょう。
累進歩合は廃止された過去の制度
歩合について調べていると「累進歩合」という言葉に出会うことがあります。これは現在は廃止された過去の制度なので、正確に理解しておきましょう。
累進歩合制度とは、売上が一定額を超えるごとに歩合率そのものが段階的に上がっていく仕組みです。一見ドライバーに有利に見えますが、賃金締切日が近づくと「もう少しで歩率が上がる」という心理から無理な長時間労働やスピード違反を誘発し、交通事故につながるおそれがあるとされました。
このため、累進歩合制度は厚生労働省の通達(平成元年3月1日付け基発第93号)により廃止するものとされ、さらに平成25年の特措法附帯決議を受けて国土交通省・厚生労働省が廃止の改善指導を続けています。現在の歩合制の主流は「積算歩合(売上に応じて一定の歩合率をかける)」であり、累進歩合とは異なります。
40代未経験が歩合で損しないための確認点
歩合の仕組みを理解したうえで、40代未経験が入社前に確認すべきポイントを整理します。
※スマホでは表を横にスライドしてご覧いただけます。
| 確認項目 |
なぜ確認するか |
| 歩合率 |
手取りの基礎になる。ただし数字だけで判断しない |
| 足切りライン |
高すぎると立ち上がり期に超えられず歩合が伸びない |
| 給与体系(A/B/AB型) |
安定重視か成果重視かで選ぶべきタイプが変わる |
| 賞与積立の割合 |
月の手取りと年収の見え方が変わる |
| 保証給の期間・条件 |
未経験の立ち上がり期の収入安定に直結する |
40代未経験は最初から高い売上を出すのは難しいため、歩合率の高さよりも「足切りが緩く保証給が手厚い会社」を選ぶほうが立ち上がり期は安定しやすい傾向があります。新人期間の収入はタクシー新人年収はどれくらい?で整理しています。
まとめ|歩合は「率」だけでなく「率・足切り・体系」の総合で見る
タクシーの歩合は「売上 × 歩合率」が基本ですが、実際の手取りは歩合率だけでは決まりません。足切りライン・給与体系(A/B/AB型)・賞与積立・社会保険料や税が絡むため、額面の歩合給がそのまま手取りになるわけではなく、毎月の手取りは額面の約8割が目安です。歩合率の高さだけで会社を選ぶと、入社後に「思ったより少ない」と感じやすくなります。
また、足切りには固定給保証型と歩率逓減型があり、いずれも違法ではなく、最低賃金は最低賃金法で保証されています。累進歩合は廃止された過去の制度です。40代未経験で立ち上がり期の安定を重視するなら、歩合率の高さよりも「足切りが緩く保証給が手厚い会社」を選ぶほうが現実的といえます。
年収全体の内訳はタクシー運転手の年収はどれくらい?、保証給の見方はタクシーの保証給はどう見る?、会社ごとの条件比較は東京タクシー会社比較ガイドで確認できます。
よくある質問
Q. タクシーの歩合率はどのくらいですか?
A. 一般的に50〜60%前後が目安です。ただし会社によって幅があり、足切りラインや給与体系とセットで見る必要があります。歩合率の数字だけで手取りは決まりません。
Q. タクシーの歩合給はどう計算しますか?
A. 完全歩合(B型)は「月間売上 × 歩合率」です。固定給がある場合は「(売上 × 歩合率)+ 固定給」が基本です。AB型は賞与積立分を差し引いた額が毎月の給与になります。
Q. 足切りとは何ですか?違法ではないですか?
A. 足切りは一定の売上ラインを超えた分のみに歩合率がかかる仕組みで、それ自体は違法ではありません。未達でも解雇理由にはならず、最低賃金は1時間当たり換算で最低賃金法により保証されています。
Q. 歩合率が高い会社を選べば稼げますか?
A. 必ずしもそうとは限りません。歩合率が高くても足切りラインが高いと、立ち上がり期は超えにくく、結果的に歩合が伸びにくいことがあります。歩合率・足切り・保証給をセットで見ることが大切です。
Q. 累進歩合とは何ですか?今もありますか?
A. 売上が一定額を超えるごとに歩合率が段階的に上がる制度ですが、長時間労働や事故を誘発するおそれがあるため、厚生労働省の通達(基発第93号)により廃止するものとされた過去の制度です。現在の主流は積算歩合です。
Q. 歩合制でも収入がゼロになることはありますか?
A. ありません。完全歩合制であっても、賃金を1時間当たりに換算した額が都道府県ごとの最低賃金を下回ることはできないため、給与がゼロになることはありません。
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最終更新日:2026年6月13日
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